歯並びとは
子供の歯並びに悩みはありませんか?
 赤ちゃんの歯が最初に萠えてきた時の喜び。子供の歯がグラグラし抜け換わった時の驚き(1:前歯の乳歯の脱落)。変な位置に大人の歯が萠えてきた時の戸惑い。また、指しゃぶりの歯並びへの心配(2:指しゃぶり)。大人の歯並びへと変わる12、13歳ごろまでに、このような出来事、心配事に出会ったことはありませんか?
 子供と大人の歯並びの違いは何でしょうか?それは子供の歯並びは日々変わっていることです。歯茎の何もないところに20本の子供の乳歯が萠え、その後、順々に永久歯に換わっていきます。さらに複雑なのが、乳歯から永久歯へ換わっていく過程で、歯が植わっている土台である上下のアゴが、体が大きくなるのと同じように大きくなることです(3:胎児と大人の頭蓋)。このアゴの成長発育が大変重要な意味を持っています。すなわち、正しい、きれいな歯並びになるためには、上下のアゴが正しく成長し、なおかつ上下のアゴの関係が3次元的にバランスがとれている必要があります(4:顔の中での上下のアゴと歯の位置)。

前歯の乳歯の脱落
前歯の乳歯の脱落
指しゃぶり
指しゃぶり
胎児と大人の頭蓋
胎児と大人の頭蓋
顔の中での上下のアゴと歯の位置
顔の中での上下のアゴと歯の位置

1.どうして歯並びが悪くなるのでしょうか?
 歯並びが悪くなるのは、よく遺伝と考えがちです。しかし、いろいろな研究の結果、DNAで決まるのは骨組みだけであることが分かっています。つまり、歯の大きさ、歯のかたち、歯の数、さらに顔やアゴの骨格などの基本的な骨組みは遺伝と関係があるということです。しかし、成長発育と共にアゴが大きくなり、形を整えていくのは、生まれてからの環境に大きく影響されます。それでは、その環境とは何でしょうか?呼吸の仕方、舌の動きや使い方などは代表的なお口の環境と言えます。特に舌の働きに支障があるといろいろな問題を引き起こすことになるのです。身近で、最も悪い影響を与えるのが指しゃぶりです。指しゃぶりがあると、上アゴが前に出たり、奥歯の噛み合わせが逆さまになったり、前歯がうまく噛み合わず、ものを噛み切ったりすることができなくなったりします。人間の口の感覚には、”何かに触れていたい”、また”何かを吸いたい”という本能があります。これらを探索反射、吸啜(きゅうてつ)反射と言いますが、子供達は、これらの反射が強く、舌が指に触れ、かつ指を吸うことで本能を満たし、安堵感を得ているのです。同時に人間は理性を兼ね備えていますので、本能の赴くままにだけ生きてはいないのです。多くはある程度の段階でこれらの行動から卒業していくのですが、いつまでも続いていたり、昼夜を問わず行なわれたりすると正しい舌の働きを習得できずに、お口の環境にバランスを欠き、歯の位置やアゴの成長発育を歪めたりすることになるのです(正しい歯並びの7-9の開咬を参照)。

2.子供の歯並びの悪いのはどのように考えたらよいのでしょうか?
 矯正装置を付けた子供達の姿も珍しくなくなってきました。結構なことと思いますが、子供の時に矯正したのに大人の歯並びはきれいになっていないという不満を耳にすることがあります。乳歯だけの時期や、乳歯と永久歯の混在している時期の矯正治療とは、どういうものでしょうか?乳歯は萠え換わってしまうのだから治療はムダじゃないの?という親御さんの言葉を耳にすることもあります。矯正治療の最終的な目的は大人の歯並びを正しく、きれいにすることです。子供の歯並びは、先程もお話致しましたが、土台であるアゴの成長発育は呼吸や舌の動きなどの口腔環境の影響を大きく受けているということを思い出して下さい。何らかの原因で上下のアゴの関係が3次元的にバランスがとれていない場合などは、早急に適正な矯正装置で是正して、整えてあげる必要があります(5 :代表的な使われる装置_1_2x2装置、2_機能的顎矯正装置、3_ヘッドギア装置)。後から萠えてくる永久歯のために良い環境を用意してあげようということです。ただ、乳歯の下にある永久歯までは動かせませんから子供の矯正治療は限られたところだけの治療となります。これを第1段階の治療(第一期治療)と言います。一方、最終的な永久歯での本格的な治療を第2段階の治療(第二期治療あるいは本格矯正治療)と言います。このように子供の矯正治療は、一般的に2段階に分けて行なうことが多いと言えます。つまり、長期間に渡り矯正治療と付き合うことになります。第2段階の治療前に息切れをして、最終ゴールに到達できずにコースアウトしてしまう人がでてくる場合もあるということです。
 一方、程度にもよりますが、1、2本の歯が出ているとか、まがっているというような場合は永久歯に萠え換わった後に1度で矯正治療を終わらせれることもあります。つまり、子供の矯正治療はすぐに装置を装着して治療を開始し、長い期間の治療が必要となるかどうか、その見極めが大切であるということです。

代表的な使われる装置
代表的な使われる装置 2x2装置、機能的顎矯正装置、ヘッドギア装置

3.土台であるアゴの矯正治療とはどういうことでしょうか?
 上下のアゴのバランスが崩れている場合、それをどのようにして治すのでしょうか?口腔環境によってアゴの成長発育が影響を受けるというお話を致しましたが、これは、人為的な力によってアゴの位置が変わるということを意味しています。顔やアゴは一つの骨から成り立っているのではなく、いくつかの骨が集まってできています。一つひとつの骨の間には隙間があり、そこにクッションのような組織が介在しています。このクッション部に刺激が加わると、そこにある細胞が骨を作ったり、骨を壊したりして骨の形を変えていきます。この例ではヘッドギアを応用し、上アゴの成長を抑制しています(6 :第一期治療による治療例_1_治療前、2_治療後)。これは大変重要な概念で、歯を動かすときにも似たようなことが起きています。なお、アゴ自体を動かすことができるのは、成長期にある子供にのみに可能ですので気をつけて下さい。成長の止まった大人では、骨と骨の間のクッションが無くなり、骨が固まっていますのでいくら力をかけてもアゴを動かすことはできません。大人でアゴを動かす必要がある場合には、外科手術が必要になります(7 :外科矯正治療の治療例_1_治療前、2_治療後)。
 なお、成長期に正しい口腔環境の下でアゴを鍛えることはアゴの成長発育にとってプラスになりますので、正しいかみ方で、よく噛むということは大切です。

第一期治療による治療例
第一期治療による治療例
外科矯正治療の治療例
外科矯正治療の治療例