歯並びとは
大人の歯並びに悩みはありませんか?
 会話時の口臭。美味しく食べ物を食べることのできない不自由さ。歯の治療がスムーズにできないイライラ。昔、矯正治療をしたのに元に戻ってしまった無念。歯軋りのため友人との旅行の憂鬱。12、13歳ごろに永久歯がすべて萠え、大人の歯並びになってからは歯は交換することはもうありません。一生この歯で過ごすことになります。そして、虫歯の痛さに涙が出たり、治療に通ったり、逆に歯こう(プラーク)や歯石をクリーニングしてもらいすっきりとした気分になったり、と歯も人生と同じように歴史(1:歯にも歴史あり)を刻んでいきます。少し、大人の歯並びについて考えてみましょう。

歯にも歴史あり
歯にも歴史あり
 
1.大人の歯並びでの悩みは何んでしょうか?
 平均寿命が80歳とすると、おおよそ70年間、年の経過と共に歯並びも、その時その時で状況が異なります。見た目を気にするのは若者ばかりではありません。現在では50、60代でもきれいになりたいとのことから矯正治療を希望される方が増えています。歯や口の中も例外ではなく老化していきますので、見た目の悪さが一段と強調されるように思えるのでしょうか、特に女性の方に関心が高いようです。また、よく噛めるようになりたい、歯軋りなどで歯が磨り減っているなどの機能的な悩みは、若い人でもありますが、さらに年齢が上がるとより深刻な悩みになる場合もあります。つまり、歯を40年も50年も酷使し続けるといろいろと機能的にも不都合が起きてくるということです(2:歯の歴史を物語る歯並び)。
 大人の矯正治療は1分1秒を争うようなものではありません。治療によって得られる利点も様々ありますが、自らの治療の限界やリスクもしっかり把握しておくべきでしょう。豊富な情報の中から自分に合ったものはどれか十分に吟味し、納得できるまで説明を受けましょう。もし、リスクが自分にとってデメリットと考えるのであれば見合わせればいいと思います。治療をするか、しないかを決めるのはあなたです。治療の成否は信頼関係によっても左右されますので、長期間の通院中に行き違いなどが生じないためにも、あなたの希望を率直に先生に伝え、専門である先生からの意見をしっかり聞き、疑問を残さないようにしましょう。今や大人の矯正は少数派ではありません。何か気になっているっことがあるのであれば、専門の先生に相談し、自信をもって治療を受けて下さい。

歯の歴史を物語る歯並び
歯の歴史を物語る歯並び

2.大人の歯並びの矯正治療はいくつ頃までできるのでしょうか?
 歯と骨との間に歯根膜と呼ばれる一種のクッションがある限り歯を動かすことができます(3 :1_歯、歯槽骨、歯根膜の関係、2_矯正力が加わった時のシェーマ)。つまり、70歳でも80歳でも歯根膜が健全であれば矯正治療は可能ということになります。ただし、加齢と共に体の適応力、順応力が落ちますので、子供と同じような治療を行なっても同じような治療経緯、治療結果を得ることはできません。さらに、歯根膜の病気とも言われる歯周病(歯槽膿漏)(4:歯槽膿漏で前歯は前突し、歯の間にすき間が生じている)を患っている場合には、歯茎が弱って、歯を上手に動かすことが難しくなります。したがって、大人の矯正治療は、できないのではなく、治療に慣れるまでにも時間がかかりますし、治療期間も多少長めになり、歯の動かし方にも細心の注意が必要など制約があるということを承知の上で行なうべきということです。しかし、歯が動くことには変わりありませんので勇気をもってご相談下さい。なお、子供の歯並びのところでお話しましたが、大人では、アゴを構成している骨の間のクッションが無くなり、一つの骨になっていますので子供のような成長発育を期待しながらの矯正治療はできません(子供の歯並びを参照)。つまり、土台であるアゴがズレ、これを含めた歯並びの矯正をする場合には外科手術が必要となります(5 :1_全身麻酔時、2_下アゴの手術様相)。もし、手術を望まない場合には、歯の移動だけでは限界があることを納得された上で治療を受けて頂きたいと思います。

歯、歯槽骨、歯根膜の関係、矯正力が加わった時のシェーマ
歯、歯槽骨、歯根膜の関係、矯正力が加わった時のシェーマ
歯槽膿漏で前歯は前突し、歯の間にすき間が生じている
歯槽膿漏で前歯は前突し、歯の間にすき間が生じている
全身麻酔時、下アゴの手術様相
全身麻酔時、下アゴの手術様相

3.歯並びに対する社会の意識が変わってきていると思いませんか?
 海外で暮らした経験のある人などは特に感じることだと思いますが、海外での歯あるいは歯並びに対する関心の高さに驚かされるのではないでしょうか?欧米では、歯の矯正は当たり前。アジアでも、シンガポール、タイ、韓国でも矯正治療をする人が非常に増えています。ところが、日本では矯正する人が増えたといっても、まだまだ少ないのが現状です。それは、日本人の歯並びが特別いいからではなく、歯に対する受け止め方や社会背景に違いがあるからと言われています。日本では女性が歯を見せて笑うことをあまり行儀のよいこととは考えていません。身分証明書も思いっきりの笑顔は認められていません。また、挨拶にキスの習慣がないので口臭などを気にする環境にあるとも言えません(6:口臭などがあると興ざめ?)。しかし、国際化の波と共にグローバルスタンダードという言葉の通り、欧米での歯や歯並びに対する意識が日本でも常識となり、矯正治療が一般的になるのもそう遠くはないでしょう。  さらに、テレビや雑誌などでも健康をテーマにした内容のものが大流行です。これは、誰もが元気で長生きをしたいとの願いの現れでしょう。そのために、食事や日常生活に気を遣って、いつまでも健康で若々しくいたいと体づくりをしているのです(7:誰しも健康で若くいたい)。歯並びを治すことも同じです。以前お話ししたように歯並びの悪いことは決して病気ではありません。絶対に治さなくてはいけないというものでもありません。しかし、コンプレクスや生活に支障を感じて生きていくよりも、歯並びを治して口腔環境を整えておくことで、自信に満ちた、快適な、そして一生、自分の歯で美味しく何でも食べられ、健康な生活を送くることができるようになれば素敵ではないでしょうか?

口臭などがあると興ざめ?
口臭などがあると興ざめ?
誰しも健康で若くいたい
誰しも健康で若くいたい

4.日頃のケアが大切です。
 何でもそうですが、日頃からの手入れが大切です。正しい、きれいな歯並びを獲得しても、その状態を維持していくためにはある程度の努力が必要です。また、矯正治療を望まない場合でも、虫歯のない、歯垢のない、奥歯でしっかりと噛み合う状態を保持、維持していけるような心がけが大切です。そのためには日々のケアを怠ることなく、かつ定期的な歯科健診を受けられ、口腔環境に常に気を配ることをお勧めします。