歯並びとは
矯正治療のデメリットとは?
1.費用、治療期間、わずらわしさなどについて
 矯正治療に伴うさまざまな問題点とは何でしょうか?それは本当に患者さんにとってデメリットになるのでしょうか?考え方によっては納得できる事であったり、問題点として考えるべきものではなく、目的を達成するために必要とされることかもしれません。何をするにも得られるものと失うものがあり、自分の思い通りばかりではないのが現実です。矯正治療も同様に考えられます。正しい、きれいな歯並びを得るためには、費用、時間、多少のわずらわしさ痛みなどは必ず伴うものとして捉えられるとよいでしょう。費用をかけずに、短時間でわずらわしさも痛みもない、そんな矯正治療は残念ながらありません。見えないでできる、歯を抜かないでできる、数ヶ月で終わる、全然痛くないなどという話を聞いたり見たりすると「これはいいかも」と期待を持つかも知れませんが、なかなかうまい話ばかりではありません。100年以上の歴史のある矯正治療の先進国アメリカにおいて、裏から治療する見えない矯正装置があまり普及していないのは何故でしょうか。また、治療期間に、ここ数十年間ほとんど差がないのはどうしてでしょうか?技術、装置の進歩があっても、人間の体の反応が驚くほどスピードアップするものではありません。(1 :抜歯の必要性_1_治療前、2_治療後)。
 一番気になるのは、やはり費用でしょうか。ただし、額のみで一概に高い、安いの判断はできません。誰が診てくれるのか?何をしてくれるのか?どこまで診てくれるのか?いつまで歯並びの管理をしてくれるのか?など詳細にわたり確認をする必要があると思います。例えば、担当の先生の診察が月に数回であったり、不定期であったりするために装置が壊れたなどの対応をしてもらえないには困りますね。また、装置を外したあとのケアーが一切ないのも困ります。歯並びは後戻りしたり、年齢とともに変化していきますのできれいに治した歯並びを維持するのには、それなりの管理が必要になります。長期間に渡ってケアーをしてくれるかのを確認しましょう。(2 :後戻りの例_1治療前、2_治療後、3_24年後)。
 治療期間は、患者さんの不正状態や治療目標などによって異なり、一言で言及するのは難しいとお考え下さい。小さい子供から矯正治療を始めれば、当然、永久歯にはえかわり、その歯並びの治療までの付き合いになります。このように治療期間は、矯正治療を開始する時期、治療前の不正の程度、治療目標、患者さんの協力が得られるか、そして先生の能力などに影響を受けます。ご自身の治療期間が平均的な治療期間に当てはまるかも確認しましょう。  痛みやわずらわしさは、必ず伴います。ただし、これらは、非常に個人差があります。同じ内容の処置でも、痛いと感じる、あるいはわずらわしいと感じる人もいれば、ケロっとしている人もいます。それらが我慢できる程度のものなのか、あるいは、ある期間で慣れるものなのか、など先生から説明を受けて下さい。矯正装置を入れた子どもや俳優さんがテレビに出てくる時代です。子供たちが我慢できないようであれば、こんなにも普及はしない筈です。矯正治療中の痛みやわずらわしさの程度をお分かり頂けることと思います。なお、最近は、材料、技術の進歩によって痛みは昔に比べ、ずっと軽減されていることは事実です。

抜歯の必要性
抜歯の必要性
後戻りの例
後戻りの例


2.抜歯の必要性があると言われたがーーー
 何事にも必ず得るものと失うものがあることは先ほどお話致しました。抜歯をするということは、治療目的を達成するために必要と判断された結果、と言うことになります。誰もが虫歯でもない歯を抜くことには抵抗があります。その抜歯をやむを得ないと考えることができる場合には問題ありませんが、納得できない場合には、もう一度、なぜ矯正治療を受けようとしているのか、自分の望む歯並びになるにはどの方法が良いのか見直して下さい。
 抜歯をしないで治療をしたところ、口元が一層飛び出たようになった、治療後にあっという間にデコボコができた、かみ合わせが不自然になった、などはよく耳にする話です。勿論、抜歯をしないで治療できますが、抜歯をしないことにより治療結果がどのようなものになるのかを十分に聞いておきましょう。逆に、抜歯によるリスクについても説明を受けて下さい。抜歯をしない方が、治療は単純で早く終わることは確かですが、治療目標を達成するための提案であることを忘れないで下さい。また、特に、子供は、抜歯を嫌がります。聞けば必ず、多くの子供たちは抜かないで治療する方法を希望します。子供達の当然の反応ですが、一時的なその時の判断で、将来の歯並びについての結論を出していいのでしょうか。今一度、何のために矯正治療をするのかの原点に戻って考えて下さい。

3.後戻り、再発について
 矯正治療によって歯を動かすことができるのは、歯と骨との間にある歯根膜(一種のクッション)という組織がカギを握っている話は以前に致しました(子供の歯並び、大人なの歯並びの項目を参照下さい)。歯根膜は、ある意味で歯の位置を記憶していると言われ、矯正治療によって正しい歯並びに治しても歯を元の位置に戻そうと働きます(完全に元に戻ることはほとんどありませんがーー)。つまり、歯根膜の記憶が薄れるまで歯を新しい環境にしっかりと留めておく必要があります。矯正治療では、この処置を保定処置と言います(3 :、保定装置の例_1_装着しているところ、2_取り外しの装置の例、3_取り外しのできない固定式装置の例))。正しい、きれいな歯並びをゲットした後の保定処置も矯正治療の一部であることを忘れないで下さい。
 80歳を超えるかの勢いで我々の平均寿命が延びていることはご存知の通りです。歯が萠えてから大人の歯並びになるまでの子供の歯並びの時期には、歯の土台であるアゴの骨も成長発育していて、歯並びも常に変化していることは以前触れました。それでは大人の歯並びではどうでしょうか?大人でも同じです。歯の土台であるアゴの骨は、今度は成長発育ではなく、加齢に伴う老化現象によって変化し、やせ細っていきます(4 :下アゴの変化様相_1_子供のアゴと大人のアゴ、2_歯のない人のアゴ)。そして歯並びも変化していくのです。歯並びの変化をくいとめようとすることが保定処置ということができるでしょう。
 それでは、いつまで保定を続ければよいのでしょうか?結論から言いますと、患者さんが歯並びをきれいに維持したいと思われる限り、保定処置を続けられることが望ましいということになります。小、中学生の時に治した歯並びが、大人になってから元に戻ったという話をよく聞きます。これは、後戻りや加齢に伴った変化です(1を参照して下さい)。歯は動くものということを理解し、折角治した歯並びを維持したいのであれば、装置を外したら、外しっぱなしにすることなく、保定装置をつけて保定処置をして下さい。この保定処置も大事な治療のひとつであることがご理解頂けたと思います。

保定装置の例
保定装置の例
装着しているところ、取り外しの装置の例、取り外しのできない固定式装置の例
下アゴの変化様相
下アゴの変化様相
子供のアゴと大人のアゴ、歯のない人のアゴ


4.矯正治療を見合わせる勇気も
 様々な角度から矯正治療(外科的矯正治療を含め)についての説明を受け、話し合いをし、自分の希望と治療によって予想される結果とに差がある場合(治療の限界)や治療に伴うリスクを受け入れることができない場合、または、矯正治療を受けようとする生活環境に無い場合には、矯正治療自体を見合わせることも考えられます。なお、矯正治療をその時点で見合わせたとしても、将来の矯正治療もできなくなることはありません。その際には再度先生とよくご相談下さい。ただし、残念ながらは歯並びが自然によくなる可能性はほとんどなく、どちらかと言うと、加齢に伴い少しずつ(5年、10年の単位で)悪くなっていくものとご理解下さい。